「願心(がんしん)」

2022.05.23

耳の底に残ることばがある。

「願心(がんしん)」

仏から私に願われている心。仏とは阿弥陀如来。ある先生を通していただいた、仏さまの心である。先生の名は、二年前の五月二十日、93才で亡くなった宗正元先生。

平生、迷うことの多い私はこの願心一つに立ち帰らされる。願心は「我が国に生まれよ」という願であり阿弥陀からのよびかけ。我が国とは仏国、清浄なる国。

 

宗先生はただ念仏していく一生活者でもあった。本願をお話しされるお姿は滾々と湧く泉のようであり静かに燃える焰のようでもあった。

先生に出遇わなかったら、私は自分自身に出遇わなかっただろう。

南無阿弥陀仏ということばでもある「願心」が、この娑婆世界で悪戦苦闘しながら念仏ひとつに生き抜いていかれた無数の人々の魂そのものであることを教えてくださった。

迷い続ける我が身は何ら変わることはないが、念仏する「今」が確かめられた。こちら側の計らいの心が阿弥陀の無量の心におさめ摂られた。

阿弥陀の願心は煩悩成就の我が身を翻し転じせしめる、広大で深い底のない心であることに感動した。

 

このこと一つ、お念仏一声申す道を限りなく歩んでいかれ尽くしていかれた。

宗先生のお話するお姿から、背すじを伸ばし真直ぐに道を歩んでいく姿勢を教わったことである。