親友(しんぬ)

2021.03.26

「無二の親友」という言葉がありますが、この娑婆でかけがえのない友人に出会うことができたら、人生はより豊かな歩みになるのでしょう。

 

お念仏の教えでは、親友を「しんぬ」と読みます。

お釈迦さまが私たちにかけてくださる言葉として登場します。

仏の教えに出遇い、人と生まれたことを喜びあえた一人ひとりに、「わがよき親友よ」と、喜びほめたたえてくださるのです。

 

宗祖・親鸞聖人がご和讃でその仏の徳を讃えておられます。

 

「他力の信心うるひとを うやまひおおきによろこべば すなわちわが親友ぞと 教主世尊(お釈迦さま)はほめたまふ」(正像末和讃)

 

他力の信心とは、南無阿弥陀仏を称えることです。

お釈迦さまは一般的な対人関係においての親しい友人という意義ではなく、仏さま(阿弥陀如来)に出遇った者同士の関係において、わが親友(しんぬ)よと敬っておられるのです。中心はどこまでも仏さまです。

そして、その仏さまとは「そのままの自分でよいのです」と、あらゆる命を包み込んでくださる存在です。

 

私たちの日常生活を観ますと、今よりもっといい自分になる事を夢見たり、また自己承認欲求を満たす情報に覆われています。しかし心のどこかで、他と比較する自己から解放され、本当に安心できる環境を求めているのではないでしょうか。

 

親友(しんぬ)とは、真の平等に目覚めた喜びをわかちあう不二の輩(ともがら)のことであり、人間社会を超えた大きな世界から賜る大事な尊称なのです。